赤い卵

7
8

イタズラなんかじゃない。僕の話を聞いてほしい。
学校からいつも通り帰っていたら、妙なものを見つけたんだ。真っ赤な、僕の顔くらいある大きな、卵みたいなもの。
「何だこれ」
指でつついても何も起きなかったので、持ち上げてみる。とても重かった。僕はそれを持って帰った。よく見ると色んな所にそれは落ちていた。
お母さんに見つかると返してきなさいと言われるに決まっているので、こっそり部屋に持って行った。
夜、異常に熱くて目が覚めた。見ると僕のお腹で温めていた卵が割れて、炎に包まれた鳥がベッドの足元で翼を広げて立っていた。あんまりキレイなので見とれてしまった。次の瞬間、鳥は網戸を破って飛んで行ってしまった。
「ケン!ベッドが燃えてるじゃない!逃げるよ!」
その晩、市内で12件起きた不審火は、子供のイタズラだと片付けられた。
イタズラなんかじゃない。あれは確かに火の鳥だったんだよ。ねえ、本当なんだ。
その他
公開:19/10/16 10:16
更新:19/10/16 10:36

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容