あの日の子守唄

私は夜になると、すぐに寝てしまう。これは幼い頃から社会人となった今でも変わらない。
学生時代、夜遊びもしなければ、修学旅行でも真っ先に寝ていたから、きっとつまらない奴だと思われていただろう。
でもこればっかりは仕方がない。意識して規則正しい生活を心がけているわけではないのだ。もう体が、そういう体になってしまっているだけ。
その原因はわかっている。
私が記憶している最も幼なかったあの日の、音色。
癒しの音楽をBGMに母が歌ってくれた、子守唄。
CDデッキの調子が悪かったのか、コンスタントにプツッ、プツッ、といった雑音がまじっていた。
その雑音と母の歌が妙にマッチしていたのだ。

　羊が、ひとむしりぃ～♪
　　羊が、ふたむしりぃ～♪

そして癒しの音楽の最後には羊の鳴き声が入っていた。

「メェェ……」

その鳴き声が「お前が早く寝ないから毛がなくなったじゃないか！」と言われているようで……。