あの時の音色

（ジャーン）
「あ、あ、あ、あ、あ」
「もっと、お腹に力を入れて発声してみて」
「あ、あ、あ、あ、あ」
「愛する人が自分の事を振り向いてくれない、そんな悲しい感情を前面に押し出して」
「あ、あ、あ、あ、あ」
「死んだと思っていた恋人が奇跡的にも生きていた、そんな驚きの感情で」
「あ、あ、あ、あ、あ」
「部屋に帰って見たら、知らない女と夫が全裸で抱き合っていた、その時の驚き、今まで夫の不倫に気付けなかった自分の不甲斐なさ、信じていた夫に裏切られた憤り、そんな感情を相手にぶつけたいのに上手く言葉にして反論できないもどかしさ、それを言葉にして」
「あ、あ、あ、あ、あ」
「今までの全て感情をメロディーに乗せて」
「あ、あ、あ、あ、あ」
「はい、よくできました。これが「あ」の時の音色です。これをマスターした皆さんなら「ラ」の時の音色も表現できるはずです。次は応用編、「ル」の音色に挑戦してみて下さい」