蝶の羽ばたき、君とのひととき

0
4

手に持つ缶コーヒーから冷たい熱が伝わる。
そよ風は桜の花びらを僕らの座るベンチまで運んだ。
何を話そう、と考えていると、
「ねぇ、軽音サークルどうする? 入る?」と君。
「迷ってるんだ」と僕。
目を合わせられず、彼女の持つ缶コーヒーを見ると湯気。
「私ね、入ろうと思うんだ。というか、今決めた」
「え? 今?」思わず目線が君にいく。
「バタフライ効果って知ってる?」
「聞いたことあるけど、意味は……」
「蝶の羽ばたきが、いずれ地球の反対側でハリケーンを巻き起こすことらしいの。小さなきっかけが、色んな出来事を呼び、大きな現象となっていくこと」
語っている彼女の横顔を、ずっと見つめていたいと思った。
「私ね、新歓コンパで見かけたあなたと、ここでたまたま出会ったことが、そういうことだと思ったんだよね。ねぇ、一緒に入ろうよ」と君は手を差し出す。

握手を交わしたその手から、何かが変わる熱さを感じた。
青春
公開:19/10/14 23:53
更新:19/10/17 09:44
青春 大学生 節目 軽音 サークル バタフライエフェクト バタフライ効果

冨田亮太( 東京・埼玉 )

雰囲気重視。

 

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容