節目結び

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手芸が趣味の母は、文箱の小物で、私によく玩具を作ってくれました。
「花結びよ。綺麗でしょう?」
和紙の水引を、花の形に結んだもの。不格好な蝶々を飛ばせながら、魔法の様に踊る指を、私はいつも飽かず眺めたものです。
小学校の入学式は、名札に添えて薄紅の桜。誕生日の本と、栞代わりの向日葵。受験の朝はお守りの四つ葉。私の成長を、母の笑顔と共に彩ってくれました。
六月の結婚式には、ブーケ仕立ての紫陽花。「いつでも帰っておいで」と忍ばせてくれた桔梗は、夫に内緒の宝物です。
妊娠を伝えた時は、安産祈願の腹帯に紅白の梅。娘の節句には雛人形と桃。人生の節目節目、溢れんばかりの愛情を込めてくれました。

母の旅立ちの日、私は棺一杯に、白菊と蓮華を結びました。返しきれなかった沢山が、少しでも届く様にと。
そして今、娘が孫に教えるのは、玉結び。まだ蕾の彼女が、どんな花を開き、実を結ぶのか、今からとても楽しみです。
その他
公開:19/10/14 22:40
節目 水引の花結び

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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