君を優しく包みたい

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それまでの俺は長いものに巻かれるだけのつまらない男だった。屈折してる奴は不良だと思ってた。
でも、彼女に出会った瞬間、俺は自分が何のために生まれてきたかを理解した。彼女を命を賭けて守りたいと思った。
「キレイなあなたが眩しい。私は汚れてるわ」
「そんなことない」
「でも、あなたには裏表がある。私にはわかるの」
彼女は最初、俺に抱かれる事を拒んだ。だから俺は親元を離れ、自分の体を傷つけた。彼女にふさわしい男になるには、これしかなかった。こんな俺はいつかきっと捨てられる。それがわかっていても、後悔はしなかった。

生まれ変わった俺を見て、彼女は喜んだ。
「私を包みこんで」
俺はクシャクシャになった体で彼女を包み、水分を適度に付着させつつ予熱で米の旨味を閉じこめた。
「君は汚れてなんかない。俺が雑菌の繁殖を防いでやる」

おにぎりに出会ってしまったこと。
それが俺、アルミホイルの節目だったのさ。
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公開:19/10/14 11:09
更新:19/10/14 22:03
一度クシャクシャにしてから 包むのがコツらしいです。

のりてるぴか( ちばけん )

月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。

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