やってきた

6
6

 僕らが見上げる空には金属を使って、人工的に作られた月がいくつも浮かんでいる。
 いつからあそこにあるのか、何のために作られたのか。僕らは、何も知らない。
 こおん。
 どこか遠くで、金属月に何かがぶつかった音がした。
 鈍い音。その音の表情は、みるみるうちに変化していき、何事も無かったかのようにフェードアウトしていく。
「何がぶつかった音なんだろう」
 首を傾げていると、再び。
 こおん。ごうん。ばわん。
 今度は三回連続。音が波打ってぶつかる。空気が揺れる感覚が伝わってくる。
「新しい月が来たよ」
 誰かが話している声が聞こえた。
 新しい月? 声の方を見ると、二人並んでるうちの一人が空を指さしている。
 それにつられて空を見上げる。
 そこには、きっと出来立ての、ピカピカに光る金属月が四つ浮かんでいた。
 あれ?
 空のずっと上の方で、誰かがこの街を覗き込んでいるように見えた。
SF
公開:19/10/15 20:42
金属製の午後

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容