しせんの先には何が

診察中の医者が私の後ろを見つめている気がしたのは、何かの勘違いだろうか。手術は無事に終わり、車椅子ではあるが院内を自由に動けるようにはなった。これから自力で病室に戻るところである。

夕食の時間、ベッドまで看護師が食事を運んできてくれた。彼女は私の斜め後方に視線を投げたような気がしたのも、これまた何かの勘違いであろうか。

翌日、警察が事情聴取のために病室までやってきた。制服警官ではなく、刑事ふたりである。中年の刑事が私に質問をしている間、若い方の刑事が私の斜め後ろをちらちら観ているのが気になったが、これもまた勘違いであろうか。

一週間後、ようやく退院できた私は、車椅子からも開放され、自分で歩けるようになった。損害賠償の件で弁護士事務所を訪れたら、担当の弁護士が視線をずらしている。これも勘違いかな。

きっとみんな守秘義務とやらで話せないことがあるのだろう。そう思って妻を観ると……。