王手
8
6
漸くこの日が来た。
念願叶って将棋名人戦のタイトルが取れた。もう何も望まない。
この10年間、俺は生活の全てを棋力向上に傾け、それ以外のことから目を背けた。
だがそれも昨日まで。今日からの俺は違う。
10年間待たせた目の前にいる彼女をこれからは幸せにする。それが俺の新しい願望だ。
今、俺と彼女の間には将棋盤がある。これから俺は最後の一手をここに打つ。
これまでの人生に区切りをつけ、二人で歩む人生の始まりの一手を俺は心を込めて打つ。
「王手…」
俺は彼女の顔を見た。目線が合った。
「………妻取り」
俺は手を棋盤から放す。彼女の目線がそこに向く。
「10年前に買った。渡すのは今日になっちまったけどな」
最後の駒は指輪の入った箱。
彼女はニッコリ笑って…
「まいりました」
頭を下げた。
チキショー!負けたのは俺だ。嬉しいけど。
念願叶って将棋名人戦のタイトルが取れた。もう何も望まない。
この10年間、俺は生活の全てを棋力向上に傾け、それ以外のことから目を背けた。
だがそれも昨日まで。今日からの俺は違う。
10年間待たせた目の前にいる彼女をこれからは幸せにする。それが俺の新しい願望だ。
今、俺と彼女の間には将棋盤がある。これから俺は最後の一手をここに打つ。
これまでの人生に区切りをつけ、二人で歩む人生の始まりの一手を俺は心を込めて打つ。
「王手…」
俺は彼女の顔を見た。目線が合った。
「………妻取り」
俺は手を棋盤から放す。彼女の目線がそこに向く。
「10年前に買った。渡すのは今日になっちまったけどな」
最後の駒は指輪の入った箱。
彼女はニッコリ笑って…
「まいりました」
頭を下げた。
チキショー!負けたのは俺だ。嬉しいけど。
その他
公開:19/10/12 18:02
ログインするとコメントを投稿できます