たんぺんのお酒

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【短篇酒】
 英国統治時代のビルマで製造されていた度数約60%の蒸留
酒でレシピは不明。
 真偽のほどは定かではないがサキ(Saki)はこれをナイト
キャップとして常用し、その理由を訊かれて「短篇小説風の
夢が見られるから」と答えたそうだ。現在は流通しておらず
入手は不可能と思われる。
 かつて小生は旧知の印度人貿易商より、これの200ml壜を
譲り受けて試飲したことがあるが、毎回、抱腹絶倒かつ見事
なストーリー展開と斬新な実験性を兼ねそなえた傑作レベル
の明晰夢を見ることが出来た。惜しむらくは覚醒するとその
内容をまったく思い出せなくなる点で、強烈な面白さだった
ことだけは憶えているので実に悩ましかった。
 件の貿易商によれば特殊な才能を有する者のみが記憶を保
持し得るという。
【極短篇酒】
 度数・効能は短篇酒とほぼおなじであるが夢の長さがかな
り短い。星新一が愛飲していたと言われる。
その他
公開:19/10/12 17:29
更新:19/10/20 00:48

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