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まさかこんな形で世界が滅ぶとは思わなかった。
男はそんなことを思いながら海辺に立っていた。
数年前、小さな真っ黒の球体が世界中に出現した。
調査員や科学者が研究しようとしたらしいが、そんな時間はなかった。
すぐに球体が広がり始めたからだ。
もはや球体ではなく、暗闇だった。
暗闇が人々を飲み込んでいった。
飲み込まれた後のことは誰も知らない。
生還した人がいないから知りようもないのだ。
噂では、一切の光が届かない、前後左右も判別できないくらいの闇らしい。
とにかく人々は恐れた。
逃げて逃げて、必死に逃げた。
男もその一人だった。
しかし、それも今日で終わりだ。
男は暗闇を背にゆっくりと海へ歩いていった。
その他
公開:19/10/13 17:20

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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