どこにでも居るような旅人の手記

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太陽が燦々と照りつける昼下がり。
私は草原を歩いている。
外套で隠していた肌は焼け、頭は正常な判断が出来なくなっている。
ときどき、何かないかと遠くを見通しても、見えるのは地平線で揺らいだ陽炎だけ。
目印になる雲一つない空の下で歩くのは、かなりの苦痛だ。
水分ももうそろそろで底を尽きる。このままでは死んでしまうだろう。
だが幸いにも、少し前からそよ風が吹くようになった。
籠もりきった体温が空気に溶けていく感覚は、私に生を実感させてくれる。
そして得た活力を消費して、私は自分の信じる前へ歩き続けるしかないのだ。


だから、ああ、街よ、森よ、湖よ。
早くその甘美な姿を見せてくれ。幻すら見えないなんて、余りにひどいじゃないか。
その他
公開:19/10/13 15:44
更新:19/10/13 16:01

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