節目の価値観

俺は世界で一番愚かな男だと馬鹿にされた。
惚れた女に全てを捧げ、唯一無二の親友に全てを託した。
俺は金と地位と名声を失った。
口さがない者達は俺を嘲笑う。笑いたければ笑うがいい。
俺はこれまで稼いできた金よりも、築いてきた立場よりも、不特定多数の者から贈られる称賛の声よりも親友と最愛の女性の幸せを願った。
何でも出来ると思っていた俺でも彼女を幸せにすることは出来なかった。
親友なら彼女を幸せに出来ると知っていた。だから俺は身を引いた。
親友と彼女が釣り合うよう便宜も図った。そして俺は全てを失った。
二人は幸せを掴んだ。息子には俺の名前を付けたよ。最高の名誉だ。
確かに俺は全てを失った。でもな、大切な二人はいつだって俺の味方でいてくれる。
目に見えるものは何も入っていない俺のポケット。しかしその中には夢と希望が詰まっている。
俺はポケットに手を突っ込むと幸せの切符を握る。
新たなスタートだ。