しゅわしゅわ

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私は山姥と呼ばれる人食い鬼。獲物を待つ狩人だ。
ある夜、我が家にやって来たのは旅人の若い男だった。これは好都合。私は舌なめずりをして男を家に招き入れた。
痺れ薬入りの食事を与え、今日は早く休むよう言った。さて…私も仕事をするとしよう。
しゅわっ!しゅわっ!包丁を研ぐ。
獲物をキラリと光らせ、私は男の布団を剥ぎ取った。さあ!恐怖でその顔を歪ませろ!
しかし男は顔を赤らめモジモジしていた。
「あ…貴方のような美しい人が夜這いに来るとは思わなくて…ドキドキしています」
この男、何を言っているんだ?
「さっきから全身が痺れているんです!これが恋なのですね!貴方が好きです!結婚してください!」
今度は私が顔を赤くする番だ。動揺した私は部屋を出るとしゅわしゅわしゅわっ!と一晩中、心を落ち着ける為に包丁を研ぎ続けた。

あれから数年が経ち、私は今食べちゃいたいくらい可愛い我が子を抱き、幸せを感じている。
公開:19/10/10 18:11

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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