ポイント制

　全日本選手権決勝。決勝の相手は現在9連覇中のチャンピオンだった。
　彼に憧れ9年前から競技を始め、ここまでたどり着いた俺は負ける気がしなかった。なぜなら当時とは違い、チャンピオンは衰えていたのだ。
大会の直前、彼は報道陣にこう言った。
「最近は若い頃のようにいかなくてね。全日本10連覇、これを節目に引退したいと思います。」
　だが、今日の彼のスコアを試合前に確認した俺は驚いた。予選から準決勝まで相手に1ポイントも取られずに完封勝ちしているのだ。だからと言って、ここで負けるわけにはいかない。
　試合開始の合図。それと同時にチャンピオンは審判に何かを手渡しに行った。審判はそれにスタンプを押し、彼に質問する。
「決勝戦参加のポイントが10個溜まったので、決勝戦を一回だけタダで勝ち抜けることができます。今回、その権利を使いますか？」
「お願いします。」
10連覇の偉業に会場は歓声で包まれた。