月に向かって
4
8
「はい、あ~ん」
あ~、と大きく開けた母の口へ寿司を運ぶ。
「美味しい?」
母は笑顔で頷いた。
「次は何食べる?」と、回っている皿に目をやる。
しかし母は、「もうお腹一杯」と首を横に振った。
「あんたは? 食べたの?」
「うん。俺はいいよ。じゃあ出ようか」
3皿分の料金を払って店を出る。
助手席のドアを開け、母を座らせてシートベルトをかけてから、運転席に乗り込んだ。
海沿いの夜道を走る。海の上には、綺麗な月が浮かんでいる。満月だった。
「あんたいくつになった?」
突然母が言った。
「63歳だよ」
そうかい、もうそんな歳かい。
そして、少しの沈黙。
「迷惑かけたねえ」
母の言葉に喉が詰まる。ごめんな母さん、もう。
「ありがとうな」
アクセルを強く踏み込む。
加速した車はガードレールを突き破り、そして、
月に向かって飛んだ。
綺麗だった。
母さん。
生まれ変わっても、また親子になろうな。
あ~、と大きく開けた母の口へ寿司を運ぶ。
「美味しい?」
母は笑顔で頷いた。
「次は何食べる?」と、回っている皿に目をやる。
しかし母は、「もうお腹一杯」と首を横に振った。
「あんたは? 食べたの?」
「うん。俺はいいよ。じゃあ出ようか」
3皿分の料金を払って店を出る。
助手席のドアを開け、母を座らせてシートベルトをかけてから、運転席に乗り込んだ。
海沿いの夜道を走る。海の上には、綺麗な月が浮かんでいる。満月だった。
「あんたいくつになった?」
突然母が言った。
「63歳だよ」
そうかい、もうそんな歳かい。
そして、少しの沈黙。
「迷惑かけたねえ」
母の言葉に喉が詰まる。ごめんな母さん、もう。
「ありがとうな」
アクセルを強く踏み込む。
加速した車はガードレールを突き破り、そして、
月に向かって飛んだ。
綺麗だった。
母さん。
生まれ変わっても、また親子になろうな。
その他
公開:19/10/10 21:53
更新:19/10/10 21:56
更新:19/10/10 21:56
節目
介護
※参考
実際にあった
悲しい事件の数々
ログインするとコメントを投稿できます