私の見える世界

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コツーン

「す、すいません」
「いいのよ。気にしないで。ここの交差点危ないから手を引きますよ」
「ありがとうございます。助かります」

滅多にないのだが、白杖が人に当たってしまった。

私を気遣ってくれたその女性の手に触れると、感情的な涙の構造式が見えた。
この構造式の人は優しい人が多い。

私は光を知らないが、物質の構造式は見える。
例えばコーヒー。
手元にCとNを二重線と線が2つの六角形を結ぶカフェインの構造が見える。だからコーヒーを飲んでると認識ができる。
幼い頃は何だかわからなかったが、化学を学び、これが構造式だと知った。
それからありとあらゆるものが、手に取るようにわかった。

構造式なんて薬を表すのに使うぐらいだから、私の見える世界は他人が見たら、薬をばら撒いたような世界のかもしれない。
でも、それが私の世界を広げてくれた。
幾何学ではなく、この世界の息吹を感じる温かい光だ。
その他
公開:19/10/10 21:31
スクー 余白を埋め尽くしたい サプリメント

さささ ゆゆ( 東京 )

最近生業が忙しく、庭の手入れが疎かな庭師の庭でございます。

「これはいかんっ!!」と突然来ては草刈りをガツガツとし、バンバン種を撒きます。

なので庭は、愉快も怖いも不思議もごちゃごちゃ。

でもね、よく読むと同じ花だってわかりますよ。


Twitter:さささ ゆゆ@sa3_yu2





 

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