千本鳥居(隙間の先輩の話)

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 隙間に挟まったものを取り除く仕事の先輩の後ろについて、千本鳥居の中を歩いている。
「上だ。空が見えるか? 見えればよし。見えなければ必ず何かが挟まっているから、それをこのバールで叩き落す。いいか?」
「はい。あの何かっていうのは……」
「そんなことはどうでもいい。バレーボール、バスケットボール。鳩。縫いぐるみ。入れ歯。体の一部。現金。上は簡単だ。突くことも引っ掛けることもできる。問題は、こっちだ」
 先輩は脚部をコンコンと叩く。
「ここには、カードや、帯紐、鼻緒、へその緒。現金。体の一部が挟まるから、バールの細い方でコジるように取り除く。途中で破らないように。いいか」
「はい。でもあのこんな指も入らないようなところにどうやって……」
「そんなことはどうでもいい。それで一番面倒なのはここだ」
 先輩はそういって、足元の石段の隙間へストンと消えた。僕は先輩についていくことができなかった。
ファンタジー
公開:19/10/09 12:30
更新:19/10/09 12:30

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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