252. 美肌の秘密

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「あちらのお客様から」行きつけの居酒屋で店主が声をかけてきた。
『あぁどうも…』運ばれてきたそれは、いつもより重かった。
俺は人の溜め息を集めることを仕事としている。この店とは契約を結んでおり、一人で来店し、愚痴りつつ浴びるように酒を飲んでいる奴が吐いたそれを、店主が店内に設置している特殊なフィルターに吸い込ませ、こちらへ持ってくるのだ。
『これはまた量が多いですね』私はさも、その客が気の毒だと言わんばかりに眉を下げる。
「いやぁ、いつも助かります!いくらうちが安居酒屋だからって、溜め息や不満ばかり吐かれちゃ空気が悪くなる一方だったので、ほんとありがたいですよ」
『こちらこそ、お役に立てて嬉しいです』

俺はそそくさと帰宅すると、そのフィルターを冷蔵庫で一晩寝かせ、翌朝妻の焼いたパンケーキの上で丁寧に絞った。
「『人の不幸から採った蜜は最高だね』」

お陰で、俺も妻も肌の調子はいつもいい。
その他
公開:19/10/09 12:00
更新:19/10/09 12:11
スクー 美肌効果マイレージ

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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