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昔、ある所に一人の武士がいた。
その武士は常に礼義も節度もある皆に慕われる良い人間だった。
だが、ある時、武士はポツリと呟いた。
「いい人間を演じるのはもう疲れたなあ。」
そうなのである。この武士は本来、怒りっぽい性格でイラッときたらなんにでも八つ当たりする人間なのだ。この武士が良い人間を演じているのには理由がある。それは士官の道が開きそうだからである。ここで問題を起こして棒に振るわけにはいかない。だから、仕方なく我慢しているのである。

そんなある日、武士は竹林を通りかかった。
「んっ、そうだ」武士はある事を閃いた。
この竹を刀で切って憂さ晴らしをしようじゃないか。こんなにたくさんあるんだから誰にもバレはしないだろう。
武士はほくそ笑んだ。
だが、その時の武士はまだ気付いていなかった。
この竹は城主の持ち物である事に。
数日後、武士は節分の鬼の様に領内から追い出されたそうな。
公開:19/10/10 02:36
更新:19/10/10 02:37

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