開けてはいけない

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「すっかり荒れてしまったな」

夏の暑さのせいにして、すっかり庭の手入れをサボってしまった。
季節はもう秋。草は膝丈まで伸びている。

草むしりを進めるうちに、見知らぬドアが現れた。
腰をかがめれば、くぐり抜けられそうな高さだ。

「開けてはいけない」
心の中の声は、そう警告していた。

もう一人の自分は、興味を抑えられずに言う。
「ドアの向こうに何があるか、見たくないのか?」

結局、好奇心に負けた。

「ギイッ」
錆びついたノブを引っぱると、扉が開いた。

恐る恐る、扉の向こうの空間に踏み出す。
なんだ、いつもの庭だ。怖がることなんてなかったんだ。

どこか変だと気づいたのは、しばらくしてからだった。
いつまで経っても、草が減らない。

背中で何か動く気配がした。

草が身体中に絡み付く。声をあげても、聞くものはいない。

誰もいなくなった庭には、涼しい秋風が吹いている。
ファンタジー
公開:19/10/09 22:32
更新:19/10/10 13:42
壬生さん宿題 草むしり

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
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