始めなければ終わらない

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‪トントントン‬
‪狭いワンルームに響く音に、ただ息を殺す。部屋の片隅で毛布にくるまり、嵐がすぎるのをじっと待つ。
(昨日は玄関だったのに、今日は窓か‬)
‪暫くすると、隣の部屋の窓を叩く音がした。ガタリ と建付けの悪い窓が開く音が嫌によく聞こえる。
そこに現れるのは物語のヒロインだろうか、それとも魔法少女に変身させてくれるような愛らしい動物か。
何かしら主要人物であるのに間違いはないのだろう。そうなるようにできているのだ。
何やらやり取りがあったあと、窓が閉まる音までがセットだ。
どうやら今回の主人公は隣の彼で決まりらしい。‬これで暫くは‬、ただ凡庸な日々が続くだろう。
安い煙草に火をつけて窓を開けると、二階から見える朝日が嫌に目に沁みた。
‪(皆が皆、主人公になりたいわけじゃあないってこと、いつになったら"神様"は気づいてくれるのかね)
紡いだ言葉は吐き出した煙に紛れて空に消えた。
ファンタジー
公開:19/07/01 23:35

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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