寄り添う猫
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母の退院日。久しぶりに動物園に行きたいと言う母を連れて園内を散策していると、一匹の黒猫が前を横切った。
拾い上げ、周りを見渡すと女の子が泣いていた。案の定、その子に影は無く、道行く人も声に気付けず素通りしていた。
「この影、あなたの?」
「……うん!」
抱き締められた猫はその子の影に戻っていった。
「小さな子泣かせて……離れちゃだめよ」
「ナァ」
影は愛想よく鳴いた。
迷子センターで一緒に待ち、両親が現れたときには夕暮れだった。
閉園のアナウンスに呼応するように、出口を目指す人波からナァナァと鳴き声が響く。影は重なり大きくなると、静かに夕闇に溶けていく。
「帰ろ?」
園外の停留所でバスに乗り込み、私達は帰路についた。最寄りのバス停に着いたときには夜だった。
母の小さな手を引き、慎重にバスを降りる。
「離さないでね」
母がそう言うと、勘違いした夜空の猫が私の代わりに「ナァ」と鳴いた。
拾い上げ、周りを見渡すと女の子が泣いていた。案の定、その子に影は無く、道行く人も声に気付けず素通りしていた。
「この影、あなたの?」
「……うん!」
抱き締められた猫はその子の影に戻っていった。
「小さな子泣かせて……離れちゃだめよ」
「ナァ」
影は愛想よく鳴いた。
迷子センターで一緒に待ち、両親が現れたときには夕暮れだった。
閉園のアナウンスに呼応するように、出口を目指す人波からナァナァと鳴き声が響く。影は重なり大きくなると、静かに夕闇に溶けていく。
「帰ろ?」
園外の停留所でバスに乗り込み、私達は帰路についた。最寄りのバス停に着いたときには夜だった。
母の小さな手を引き、慎重にバスを降りる。
「離さないでね」
母がそう言うと、勘違いした夜空の猫が私の代わりに「ナァ」と鳴いた。
ファンタジー
公開:19/07/02 13:02
更新:19/07/03 00:19
更新:19/07/03 00:19
猫
マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。
100 サクラ
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