寝惚け

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 指輪交換を終え、そっとベールを上げると、ウエディングドレスの襟のレースが持ち上がってきて唇を覆った。
 襟をそっとずり下げると、めくり上げておいたベールが下りてきて顔を覆った。
 神父が微笑んでいる。ベール、襟、ベール、襟。最前列の両親の顔が、強張り始める。
 僕は落ち着きはらって、彼女のベールと襟とを摘み、一気に上下に開いた。
 パンという音がして、何かが式場に弾けた。
 花びら? 拍手と歓声とが上がりかけた。が、それがポテチだとわかると、式場は静寂に包まれた。
 新婦の顔が真ん中から上下に裂け、油に塗れた銀色の内側が、ステンドグラスを鈍く照り返していた。
 僕は、新婦の顔の中にまだすこし残っていたポテチをつまみ、齧ってみた。辛くて旨かった。

 ――という夢を見たよ。
 と、流しの前に立っている妻に語りかけた。
 「あなたは、また寝惚けたのよ」
 と、妻が、大きなマスク越しに答えた。
ホラー
公開:19/07/02 09:56

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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