勝手気ままなればこそ

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「主さん。もうちょっと暖かくはならんかね」
 勝手気ままな飼い猫は、目を瞑ったままそう愚痴を零した。
 そう言われても、窓は閉めているし、床にはラグマットをちゃんと敷いている。十分に暖かいはずだ。私と違って冬毛も生えているというのにこの猫は、しかし文句ばかりである。
 我慢しな。そう言うと、猫はゴロゴロと喉を鳴らして不平不満を口にする。そうして文句を言う割に、当人は陽の当たる窓辺で体を丸まらせたまま、全く動こうとしない。
「せめて、あったけぇ新品の段ボール箱を」
「もう全部ゴミに出しちゃった」
「じゃあ、炬燵を出してはくれんかね」
「畳で爪を研ぐの、止めてくれたらね」
 もう、あっちこっちがボロボロなのだ。
 無理な相談だぁ、と言って、やっぱり猫は動かなかった。
 それきり会話は続かなかった。が、勘違いしないで頂きたいが、私はこうして無為に過ごす休日が、嫌いではないのである。
ファンタジー
公開:19/07/01 23:49
日常

宇津木健太郎( 我楽多街 )

優しい世界の話。
遥かなる宇宙の話。
夏の陽だまりの中の話。
世界を覆い尽くす青空の話。
あなたの隣に居る私の話。

そんな、日常から宇宙の果てまで存在する、不思議で空想的な話を紡いでいきます。

時々ホラーも書くかも知れないけれど。

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