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「雨に濡れたくはないけれど、濡れた街を見るのは好き」
という彼女だから、僕たちが会える時間が雨ならば、必ずドライブに出かけた。
「濡れたくないのに、何故?」
と、僕は彼女に幾度尋ねたことだろう。
「濡れた街が見たいから」
という彼女の答えを、僕はどのくらい真剣に受け止めていただろう。
彼女は、助手席のウィンドウにコツンと額を当てて、ずっと外を見ていた。その目の前を水滴が、気紛れなようでいて、実は物理公式通りに移動していた。
信号待ちの時、僕は彼女を見ていた。真っ直ぐな髪に反映する赤が、やがて緑に変わる。アクセルを踏むと、街の灯が彼女の髪を流れ始める。
「雨粒の全てにこの世界の全てが映っていて、全てを映した雨粒は、世界のほんの小さな一点に弾けて消える。そうやって無数の世界が消えていく……」
雨の日のドライブで、彼女は何を見ていたのだろう? そして僕は、何を見ていたのだろう?
という彼女だから、僕たちが会える時間が雨ならば、必ずドライブに出かけた。
「濡れたくないのに、何故?」
と、僕は彼女に幾度尋ねたことだろう。
「濡れた街が見たいから」
という彼女の答えを、僕はどのくらい真剣に受け止めていただろう。
彼女は、助手席のウィンドウにコツンと額を当てて、ずっと外を見ていた。その目の前を水滴が、気紛れなようでいて、実は物理公式通りに移動していた。
信号待ちの時、僕は彼女を見ていた。真っ直ぐな髪に反映する赤が、やがて緑に変わる。アクセルを踏むと、街の灯が彼女の髪を流れ始める。
「雨粒の全てにこの世界の全てが映っていて、全てを映した雨粒は、世界のほんの小さな一点に弾けて消える。そうやって無数の世界が消えていく……」
雨の日のドライブで、彼女は何を見ていたのだろう? そして僕は、何を見ていたのだろう?
恋愛
公開:19/06/30 11:48
更新:19/06/30 12:27
更新:19/06/30 12:27
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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