檻の中から。

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これは夢なのか?幻なのか?はたまた現実の揺らぎなのか…。
同じことを延々と繰り返し、終わると思ったらまた繰り返される。
苦痛もなければ快感もない。
ただ淡々と繰り返されるだけである。
もちろん楽しいわけでもなければ、哀しくもない。
これが、人生の縮図なのかと言われればそうでもない。
人生の方がもっと味気なく無味乾燥なものだと感じていた気がする。
それに比べるとこちらの方が、傷つかないからましだと、頭の中のもう一人の自分が呟くのを、他人事のように聞いている。
今はそんな想いに想像力を働かせることで、この無意味な繰り返しに意味を持たそうとしている。
檻の外では、液晶画面に映る政治家の言い訳がましいインタビユーが明滅していた。

「そうだ。あの瞬間から望みが叶ってこの無意味な檻の中へ移動できたのだ。」

クルクル回る車輪の遊具を懸命に回しているハツカネズミが、テレビを眺めるように首を傾げていた。
ファンタジー
公開:19/06/29 18:48

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