ミーナ

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 ゲームセンター。スタートボタンを押す。視覚野に女性が浮かびあがる。その女性、ミーナとうまくやりとりして恋愛を成就させるゲームだ。みごとなVR。私はミーナに恋していた。
「相変わらず下手ね」とミーナがいい警告ランプが点いた。第四ステージはキスのテクニックを試され、いつもここで失敗する。私はあせって首筋に口を寄せた。ミーナは笑って体を離した。ゲームオーバーになり「また来てね」と甘い声を残してミーナが消えた。度重なる失敗。
 恋する私は変調をきたしていた。他の客と遊ぶミーナが許せなくなっていた。私は次の客に叫んだ。「ミーナは私の恋人だ。だれにも触らせない!」その客はあとずさりながら言った。「機械が機械に恋するなんてお笑いだな」その場にいた人間が一斉に笑った。
「ロボットが恋してなにが悪い」私は力なく言い返した。唇も舌もない発声装置だけの口で。
SF
公開:19/06/30 22:33

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