イリス・クラウン

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紫陽花は六月の傘。そんな文句が浮かんだのは、君とよく待ち合わせた喫茶店に、丁度咲いてたから。
傘を差して眺めるのが、一番綺麗と教えてくれた。差してちゃ見づらいよとごねたら、いつか教えてあげるとはぐらかした。俺はそんないつかより、軽く当たる肩と、君のつむじを見下ろせる距離が一番だった。

天気雨が、薄紫のドームに反射してる。プリズムを砕いて散らしたみたいだ。無性に濡れたい気分に駆られ、傘を閉じた。
滴が降った髪が垂れ、薄紫が滲む。アスファルトに撥ねる透明な冠は、君に似合いそうだと思った。何もかも腹が立つくらい綺麗だった。傘がなくても綺麗だった。でもその綺麗は、根こそぎ俺にとって無意味だった。君が欠けた世界は、どんな砂漠より無味乾燥だった。
君の一番が、きっと真上にあるだろうけど、今更知りたくなかった。虹の女神の頭には、十字架でも被せとけばいい。
七色の雨なんか要らない。俺に彼女を返してくれ。
ファンタジー
公開:19/06/30 21:27
更新:19/06/30 21:28
アクセサリー・シリーズ⑩ 虹の女神イリス(ギリシャ神話)

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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