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夜汽車は駅のホームに停まった。
車輛へ乗り込むと、むっとする獣臭が漂う。乗客は一様に項垂れ、はあはあと息を切らしていた。
「停車時間は五分。充分に休め!」
機関室から出てきた車掌は猫の顔をしていた。
「あ、あのう、この汽車で田舎へ帰りたいのですが⋯⋯」
俺は恐る恐る猫の車掌に尋ねた。
「では、席へ着いて!」
鐔の大きな制帽から、ぎらぎらと光る眼が覗いた。
「は、はい⋯⋯」
席に座り、横で息を整える乗客に目をやると、鼠色の背広を着た大鼠が座っていた。
「あっ!?」
と叫ぶと、ガチャリと音がした。
俺の首には鉄の輪が嵌り、黒い鎖で繋がれていた。
そして、自分の体が鼠色の毛に覆われ、長い尻尾が生えている事に気がついた。
高らかに警笛が鳴った。
ふぉおぉお、
ふぉおぉぉおぉぉお、
「さあ、出発だ!」
全員で足元の廻し車をからからと漕ぎ始めると、汽車はゆっくりと駅のホームをあとにした──。
車輛へ乗り込むと、むっとする獣臭が漂う。乗客は一様に項垂れ、はあはあと息を切らしていた。
「停車時間は五分。充分に休め!」
機関室から出てきた車掌は猫の顔をしていた。
「あ、あのう、この汽車で田舎へ帰りたいのですが⋯⋯」
俺は恐る恐る猫の車掌に尋ねた。
「では、席へ着いて!」
鐔の大きな制帽から、ぎらぎらと光る眼が覗いた。
「は、はい⋯⋯」
席に座り、横で息を整える乗客に目をやると、鼠色の背広を着た大鼠が座っていた。
「あっ!?」
と叫ぶと、ガチャリと音がした。
俺の首には鉄の輪が嵌り、黒い鎖で繋がれていた。
そして、自分の体が鼠色の毛に覆われ、長い尻尾が生えている事に気がついた。
高らかに警笛が鳴った。
ふぉおぉお、
ふぉおぉぉおぉぉお、
「さあ、出発だ!」
全員で足元の廻し車をからからと漕ぎ始めると、汽車はゆっくりと駅のホームをあとにした──。
ホラー
公開:19/06/30 15:07
更新:19/07/09 21:50
更新:19/07/09 21:50
(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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