俺たちの読書感想文の書き方

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「小原、もう感想文書いた?」
「あ、金子。いや、まだ」
「じゃあ…。今日一緒にやっちゃわないか」
「悪い、俺、一人でやりたいから」

家に帰り部屋に戻ると、俺は課題となる本を机の上に置き、口を開けた。すると舌が伸びてきて、ずずっと本の中に入っていく。
本の中で舌は、登場人物と話をしたり物を食べたり風を感じたりする。ひとしきり散策し、探索するとまた、ずずっと本から抜け出してきて、一気にしゃべりだす。それを俺は筆記する。そうして読書感想文ができあがるのだ。

「小原、入るよ」
金子が部屋に入ってきたのは、まさに舌が散策をしている最中だった。つまり、俺の舌が本に突き刺さっているときだ。

「小原、お前」

動揺した舌は本を金子に向かって投げた。すると!
なんと金子の目がその本を受け止めたのである。

「お前は舌か、小原。僕は目なんだ」

舌と目で探索した俺たちは、完璧な読書感想文を書きあげた。
その他
公開:19/06/30 14:49
スクー 舌が伸びる感想文

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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