幼馴染の代役

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喫茶店のドアを開けると、テーブル席でお婆さんが手を振っていた。
「タケちゃん、こっち」
僕は、お婆さんの向かいに座った。
「かれこれ50年ぶりねタケちゃん」
「そうだね、せっちゃん」
僕は、デアイーネという会社に幼馴染届を提出し登録していた。幼馴染の代役を務めるバイトだった。つまり彼女は依頼者だ。僕はタケちゃんの若い頃に似ているらしい。
「タケちゃん変わらないね」
「せっちゃんもな」
昔話に僕たちは花を咲かせた。
せっちゃんは涙を零して喜んでいた。

せっちゃんはあの時、天国行きの切符を握りしめていた。ガンで余命一年だった。タケちゃんは戦時中、生き別れになった幼馴染であり恋人だったようだ。

僕は夢を見ていた。川の水面が煌めいて美しい。橋の手前でお下げ髪の少女が手を振っていた。その向こう側で軍服を着た少年が手を振っている。少女は少年のもとへ駆けていった。
二人は幸せそうに花畑の中に消えた。
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公開:19/06/28 16:27
スクー 幼馴染届

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
最近はスクーのお題からの作品を楽しく書かせていただいてます。お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。

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