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「夜分にすいません。ここにあった自転車を知りませんか?」
 先月、私が「邪魔だ」と大家に言って、大家が警察に相談した結果、『本日○月○日より十日後に撤去します』と貼紙をした汚い自転車のことだ。
 私は面倒だったが経緯を説明し、スマホに撮っておいた貼紙も見せた。
「こんなことが許されるんですか?」
「妥当でしょ」
 男は私をじっと見て「そうですか」と言うと、隣の部屋へ入った。
 二週間ほど過ぎた頃、私は行きつけの美容院に来ていた。
 洗髪ブースに移動し椅子に座る。顔にタオルが置かれると、腕と体が締め付けられ、足首が固定された。声を上げようとしたら顔のタオルを押し込まれた。
 あの男だった。 
 男はスマホの画面を見せた。私の寝顔の写真。次の写真は私の耳。男はその耳たぶの上の捲れたようになっている部分を拡大し、私につきつけた。そこには文字が書いてあった。
『本日○月○日より十日後に撤去します』
ホラー
公開:19/06/28 13:29

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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