アボカド

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「主人公には弾が当たらないのね」
鉢植えのアボカドが喋った。
テレビのまわりにはいくつもの鉢植えがあって、いろんな植物が画面を覆うほど旺盛に葉を広げている。
アボカドは5年くらい前に実を食べたあと試しに植えたもので、まさか芽を出すとは思っていなかった。今は1メートルほどに育ち、ひょろりと長い茎から、犬の舌のような長い葉を重たそうに広げている。実をつけることはないけれど、ずっとそのまま、まわりの植物が枯れてしまっても、アボカドだけは何も変わらずそこにいた。
私は休日の昼にビールを飲みながら西部劇を観るのが好きだ。
「どの作品も同じだろ」
夫は呆れ顔で出かけてゆく。
「鈍いやつ」
喋ると意外に辛辣なアボカドと、私は友達になった。
「あいつ、女いるよね」
「知ってる」
それからアボカドは毎週のように実をつけた。
撃鉄。シリンダー。銃身と。
「生きてるほうが主人公よ」
銃弾は、私の胸に沢山ある。
公開:19/06/28 11:14

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