ネコタイ

10
9

この夏、中途採用で缶詰加工会社への就職が決まった。配属は営業部となり、今日が初出勤の日だ。
直属の上司への挨拶をすませると、これからすぐに商談があるという。俺はさっそくの客先に緊張しつつ、先輩たちの手を借りて資料の準備を整えた。
「よし、行くぞ魚田」
「はい!」
呼ばれた声に応え上司のもとへ急ぐ。と、上司のネクタイがもそりと動いた。よく見るとそれはネクタイではなく、襟元にしがみついた子猫だった。
「ネコタイだよ」
「ネコタイ?」
「俺たちは、猫に好かれてナンボの商売だからね。ま、勝負ネクタイだな」
うちの主力商品は猫缶だ。確かに、猫に好かれるのは重要なポイントだろう。
上司の言葉通り商談は和やかに進み、鶴の一声ならぬネコの一鳴きで、ニャンニャン拍子に契約は決まった。

「今日はついでに卸さんにも行くから」
取引先からの帰り、上司と漁協へ寄った。挨拶を交わした担当の人は、タコタイをしていた。
その他
公開:19/06/29 13:19
更新:19/07/01 07:04

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容