合理的な疑い

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 ドラえもんの身体はイルカみたいなのか、短い毛がビッシリと覆っているのかについて、寮で討論になった。
「猫型ロボットなら毛に覆われているはずだ」
「あの質感は絶対にゴムみたいなものだ」
 寮内を二分しての一触即発の事態に、寮長がある提案をした。
「骨川さんに聞いてみよう」
 関係者で唯一ご存命の骨川スネ夫さんは、十数年間前に刑期を終え、現在は三度目の再審請求中だ。
 支援者を通じて、寮長と毛派、ゴム派の代表計3名が、骨川氏に面談した。
「私も是非知りたいです」
 スネ夫氏はそう言った。
 検察証拠として提出された青い短毛には、被害者の血液とスネ夫氏の皮膚片が付着していた。だが傷口に毛は付着しておらず、ドラえもんで撲殺したとする検察側の主張には合理的な疑いがあった。
「我々はドラえもんの証拠開示請求を行っています。骨川氏の名誉のためにも」
「寮生も全員協力します」
 僕たちは固く握手をした。
その他
公開:19/06/29 13:09
更新:19/07/04 19:46
書き出しだけ大賞 二期

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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