二胡弾きのニコさん

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「足りないんだよ!」

そう言われてニコは追い出された。
ニコはネコ。でもネコには二個足りないからニコと呼ばれていた。
もふもふ感とゴロゴロ感の二個が足りないそうだ。
自分は足りないネコなんだ。
とぼとぼと歩いているとニコは不思議な楽器に出会った。二胡。二本の弦を弓で弾く楽器だ。
二胡はギターやバイオリンに比べて弦が足りない。まるで自分のようだ。
ニコは二胡を手に取ってみた。音は上手く鳴らない。初対面なのに愛想が足りない楽器だ。ニコは自分のように愛おしくなった。

その日からニコは寝る間も惜しんで練習をし、瞬く間に上達した。

毎夜、屋根の上からニコの弾く二胡の音色が街に響き渡る。
その郷愁感と孤独感が同居する音色に街の人々は熱狂した。

その中にはニコを追い出した元主人もいた。

「あれはうちのネコだ!凄いだろ!おいで!」

ニコは呟いた。

私、ニコでいい。
いや、ニコがいい。
ファンタジー
公開:19/06/29 13:04
更新:19/07/06 07:31

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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