雨の日の君

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「政治を経済の問題と考えることは、恋愛をセックスの問題と考えることと同じなのよ」
 雨粒が窓ガラスを伝い落ちてくるのを眺めていた君は、突然そんなことを言う。
「それって、どういう意味?」
 と、僕は背後から君の滑らかな背中を撫でる。すると君は背中をピクリとさせて首を傾げる。
「そんな風に意味と答えとを取り違える人は、本当の意味を理解できない人なのよ」
 君はゆったりとこちら向きに座りなおして、僕の指を少し咬む。
「本当の意味ってなんだろう?」
 僕は重ねてそう尋ねる。
 君はあきれたように欠伸をする。
「あなたには絶対にわからないと思うな」
「君には分かってるっていうのかい?」
 トン。と彼女は出窓から飛び降りる。
「私がどうか、とか関係ないでしょ。大切なのは、あなたに分かるかどうか、なんだから」
 そう言った君は僕の膝小僧を尻尾の先で軽く撫で、雨音に耳をそばだてながら寝室へ歩いていった。
ファンタジー
公開:19/06/29 09:38

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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