ミャートナイト

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24時をすぎると、肌に毛皮を纏った私は布団の中でしなやかな身体を伸ばした。

真夜中、私は猫になる。

前足でそっとドアを開けて、皆が寝静まった家を抜け出した。
2階のバルコニーから1階にある物置の上に飛び移る。
深夜の住宅街はとても無口。
ぽつぽつとしたオレンジの家の灯り。白い街灯の灯り。光線みたいなヘッドライト。冷たくて溶けそうなのは月の明かり。

しんとした空気を走り抜けて、君の家に向かう。
窓から柔らかい明かりが漏れていて、微かに音楽のようなものが聴こえる。いた。
嬉しくなった私はドアの前に行くと、出来るだけ綺麗な声でにゃあと鳴いた。
小さくドアが開く。
「やあ、また来たね」
彼は目を細め、私を招き入れた。
「いつも真夜中にしか来ないんだな」
そう言って私の顔を両手で包んで、クルクルと頭を撫でた。

スマホを見ながら、寝転がる彼がファとあくびをする。私は彼の横で目を瞑って丸くなる。
その他
公開:19/06/26 18:39
更新:19/07/13 10:31

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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