祀り猫

4
6

この町には神様がいる。その神様は翼の生えた猫の姿でいらっしゃった。
曰く、その御力で疫病を鎮めた。
曰く、その御姿で悪きを退けた。
曰くは色々あるけれど、全部大昔のことなんだ。だけどみんな知っている。太陽のような御威光で、この町をすっぽり守ってくださっていることを。
神様は決まって雨上がりに、白い翼を輝かせて水たまりの上を歩かれる。町の人々はみんな、尊敬と愛情を持ってカリカリをお供えをする。

祠は神社の丘の上。巫女たる私は知っている。暗い現を知っている。
本当の神様は、大人達に忘れられたままだ。
両手首を背中に負わされ、四肢を穿たれ血を流す、囚われた生贄だ。昔はただの猫だった。博士に飼われた猫だった。それが百薬の贄にされた。流血は万病の薬。背中の手首は博士の物だ。

悔しくないかと私は問うが、神様は博士の手首にじゃれつくばかり。そして虚ろな瞳で夢を見る。自由気ままで幸せな夢を、町に見る。
ファンタジー
公開:19/06/26 10:40
神話の光と影

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

こちらで写真を紹介、ハガキにと販売しております!
https://minne.com/@sakoyama0705  - ハンドメイドマーケットminne(ミンネ)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容