ペンバセーション

　社長も出席する会議とはいえ、自分の出番が過ぎれば退屈もする。ついうっかりペン回しをしていると、気が抜けた隙にペンが手を離れた。
　飛んだ先には部長。まずい、と思うまもなく、部長は会議資料でペンを跳ね挙げた。大きな弧を描くペン。お茶を運んできた庶務のほうへ。
　庶務のお盆が優雅にペンを打ち上げる。ペンはやわらかな軌跡で課長の前へ。
　課長は自分のペンを飛ばして迎撃。方向を変えたペンは眼鏡を拭いている常務に向けて加速。
　すると常務の眼鏡拭きが翻り、ペンは再びふわりと浮かぶ。
　ペンは一度も床に落ちることなく出席者の間を飛び、打ちとばされ、加速し、舞い上がり、とうとう社長の扇子でひときわの高みに達した後、自分の前に戻ってきた。
　両手であわてて受けとる。会議はつつがなく終了した。
　会議後、ビジネスマナー講座「ペンの美しい飛ばし方と受けとり方」にエントリーされていた。