帰路は未熟

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今、この夜道を歩いているのは僕と彼女だけ。

「ほんと寂しいね。今日で終わりだなんて。卒業した後のことなんて想像できない」
「え、大学に行くんじゃなかったっけ?」
「そういうことを言ってるんじゃないの。はぁ、でもやっぱり実感ないなぁ」
「寂しいって何が寂しいの?」
「それはみんなと会えなくなることでしょ」
「会おうと思えば会えるんじゃない?」
「だからそういうんじゃなくて。まぁ君にはわからないと思うけど」
「そうだね」

というような会話をゆっくりとした。

「じゃぁ私こっちだからバイバイ」
「うん、また明日」

ついそう返してしまったが、もう「また明日」ではない事に気づく。
そうか、彼女はこの感覚を寂しいと言っていたのか。
でも別に悲しくも切なくもないように思う。

それは僕だけだろうか。
僕にはまた会いたい人はいるだろうか。

外の空気は、門出を祝うにしては少し寒い気がした。
青春
公開:19/06/27 14:54
更新:19/06/27 14:57
青春 思春期 卒業 学生 高校生 帰り道

呉二郎

毒にも薬にもならぬ詩、物語。


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