ティヤリング

「仕事と私と、どっちが大事なの！？」
本気でぶつけると思わなかった。頑張ってる彼に絶対の禁句……。
無言で出て行った彼。玄関のドアがバン！と閉まって、私も喋れなくなった。売り言葉に買い言葉が渦を巻いて、巻いて、膝抱えて丸まって。
嫌い。嫌い。もう貴方なんか嫌い。
貴方が謝りに戻るのを待ってる私、もっと嫌い。

――いけない、寝てた。
腫れぼったい瞼をこすると、ぽろっと落ちて、床に跳ねる。
真珠？そんなの持ってない。まさかこれ、私が泣いたせい？
真珠の涙なんて、言葉のアヤだと思ったのに。綺麗なブルーグレー。でも、淋しい色。
謝ろう。決心して、ソファから起こそうとした体が、重い。
見覚えあるチノパン。はみ出したシャツ。肩の上の腕。
至近距離に、寝顔。

もう一粒。
頬っぺたから鼻を伝って、彼の耳で止まる。
ふんわり光るクリームホワイト。
男の人に真珠、意外と似合う。イヤリング作って贈ろうかな。