逃避
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満月。ひとりぼっちのお留守番。
庇に寝そべって、「にゃーん」と呟き、少女は黒猫を胸に抱く。
ゴロゴロ音をならす猫は、少女の着物の裾に潜り込む。しかし小さな手はそれを捕まえ、両手で持ち上げた。そのまま顔と顔を、こすりつける。猫はされるがままだ。
かいだるい。昼間の熱がまだ体に残っている。父母は、今日何処にいるのか。
側には月と風と、この子だけ。ふと、寂しいと思った。
「にゃーん。」会話したい。なんで私は猫の言葉をしゃべれないのだろう。そう思った時、目があった。コバルトブルーの瞳は、静かに少女を見つめた。
と、突然顔の輪郭が崩れた猫は、幾千もの羽虫になり舞った。
「置いてくの?」問うと羽虫は少女の着物を掴み舞い上がった。
そして『ここではない世界に行こう』と、確かに囁いた。
降ろされた場所には、猫が輪になり踊っていた。羽虫はいつの間にか元の姿に戻り、少女に向かって「にゃーん」と鳴いた。
庇に寝そべって、「にゃーん」と呟き、少女は黒猫を胸に抱く。
ゴロゴロ音をならす猫は、少女の着物の裾に潜り込む。しかし小さな手はそれを捕まえ、両手で持ち上げた。そのまま顔と顔を、こすりつける。猫はされるがままだ。
かいだるい。昼間の熱がまだ体に残っている。父母は、今日何処にいるのか。
側には月と風と、この子だけ。ふと、寂しいと思った。
「にゃーん。」会話したい。なんで私は猫の言葉をしゃべれないのだろう。そう思った時、目があった。コバルトブルーの瞳は、静かに少女を見つめた。
と、突然顔の輪郭が崩れた猫は、幾千もの羽虫になり舞った。
「置いてくの?」問うと羽虫は少女の着物を掴み舞い上がった。
そして『ここではない世界に行こう』と、確かに囁いた。
降ろされた場所には、猫が輪になり踊っていた。羽虫はいつの間にか元の姿に戻り、少女に向かって「にゃーん」と鳴いた。
公開:19/06/26 23:07
更新:19/06/27 06:02
更新:19/06/27 06:02
自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。
110.泡顔
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