漢方ショートショートNo.1 不思議なラジオ【三因制宜:さんいんせいぎ】

朝、いつも通りラジオのスイッチをつける。私は洋楽が好きなので、洋楽が流れるラジオ局にチューニングが合わせてある。しかし、今日はいつものラジオ局ではなかった。朝は時間が流れるのが早い。もうこのまま流れるままにした。
色々な曲が私を包みこむ。
スピーカーから、夏の日差しと白い砂浜と波…海だ。私は日焼けし楽しく遊ぶ。
曲が変わる。
次は冷たい雨の中、傘をささずに悲しみにくれる女性の私が呆然とただ歩く。
不思議なラジオだ。私は曲が変わるたびに、色々と変わる。時も人も場所も。
そしてハッとする。
人も色々いるように、人それぞれ生き方も違う、感じ方も違う。十人十色。
すべてそうだ。なにも当てはめなくてもいい。コレは良い。アレは違う。曲のように、色々とある。なぜ私は洋楽のように色々と、こだわっていたのだろうと。
「みんな違ってだからいい」
そんな温かい言葉が私を包むと、ラジオはいつもの番組に戻っていた。