ネコペン

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父からもらった箱を開けると、中に小さい三毛猫が眠っていた。ネコペンだ。背中をトントンとすると、僕の胸ポケットにするりと入り込んだ。ネコペンを優しく握ると、前足をピンと伸ばして爪をニュッとだす。その爪で文字を書くのだ。

就職試験の時。
婚姻届を書く時。
新生児の名前を書く時。
大事な時は必ず使った。

ある日ネコペンの文字が割れてかすれてきた。爪を交換しようとしたが、僕のネコペンは有名ブランドの模倣品だったようで、合う替え爪が無かった。ネコペンは申し訳ない顔で僕を見ている。気にするなと頭をポンポンすると、にゃぅんと鳴いた。

次の日ネコペンはいなくなっていた。家中どこを探しても見当たらなかった。憔悴した僕に妻が黒いネコペンを買ってきたが、使う気は起きなかった。

僕はネコペンがいつ帰ってきてもいいように替え爪を作る事にした。

模倣品なのにって?知ったことか。
あいつは、僕の一部なんだ。
ファンタジー
公開:19/06/24 21:51
更新:19/07/07 18:34
ねこぱぴぷぺぽ

たらはかに( 日本 )

たらはかに

https://twitter.com/tarahakani
猫ショートショート入選 「猫いちご ・練乳味」
渋谷ショートショート入選 「スク・ラブラブ・ランブル交差点(哀)」とか。

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