三毛月の夜

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うまくいかないことが続く時ってあるよな。その日も僕は仕事からの帰り道、腐った気分で俯いて歩いてた。
どこからか、猫の鳴き声がして顔を上げる。猫の姿は見えない。
視線を感じてハッと空を見上げると、夜空に満月のような丸い顔の三毛猫がいた。
猫?三毛猫はにゃおんと鳴いて、肉球のスタンプを押すと紫色の雲をつくった。爪を立てたところは点々と煌めく星に、空を引っ掻くと幾つもの星が流れた。

知らないお爺さんが僕の横に立って空を見上げていた。
「あんたは運がいい」
周りにはどこから集まって来たのかたくさんの猫がいて、同じように空を見上げていた。
「ついてないことばかりです」
「私は200年生きてきたが、三毛月を見たのはこれが初めてだ」
200年?驚いて横を見るとお爺さんの姿はなく、そこには小さい三毛猫がいた。
連れ帰った三毛猫は、時々空を見上げてにゃあと鳴く。
僕?あれからはいつも顔を上げて歩いてるさ。
その他
公開:19/06/23 13:48
更新:19/06/24 02:52

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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