シャンプー

「お風呂に入ろうか」
ぶわっと逆立った。すごい拒絶。
濡れるの嫌いだよな、お前。自慢の毛並みが台無しになるって言わんばかり。大丈夫、落ちないハゲない。本職のトリマーだぞ、手洗いは自信あるから。
はいはい暴れない。無駄な抵抗って判るだろ？
「服脱ぐから、先入って待ってて」
もちろん待つわけないので、風呂場に追い立ててドアをロック。
「大人しくしないと、洗濯機に突っ込むぞ」
よし、静かになった。

湯気と汗で湿気った毛を、洗面器にどぶん。シャンプー開始。
「あ、専用シャンプー切れてる。人用で良い？」
良くない？あそう。でも『洗濯』権はお前にないんだよ。
「仕上げに柔軟剤～と♪……うっ！」
油断した。こら乗るな、頭に乗るな！
「硬派な奴はモテないぞ。今はサラサラ軟派の時代だ」
よし、きれいになった。
「後はドライヤー……ぎゃっ！」

ツメ立てやがった。ウィッグの分際で。
熱風乾燥にしてやろうか。