陶器猫

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真っ白な陶器に、猫がやってきました。
葡萄の蔓が美しく伸びる、白い陶器のカップの柄の中に、三毛の猫が優雅な足取りでやってきました。
蔓の上で丸くなったり、葡萄に手を伸ばしてじゃれついたり、自由気ままにしています。
まるで一つのアニメーションのように、蔓の葉や葡萄が風に揺れます。猫が葡萄を一房引きちぎり、弄ぶたびに芳醇な一粒が底に残ったコーヒーに転がり落ちます。
映り込んだ私の視線に気がつくと、猫は陶器の中から私を見上げます。それから、ばつが悪そうに目を細め、カップソーサーに飛び移るとそのままどこかに行ってしまいました。
「ああ、またやられた」
お冷やを注ぎにきた店主が、ため息をついた。
「陶器の柄を変えてしまう悪戯猫です。高かったのになあ、このカップ」
蔓と葉と、かろうじて一房残った葡萄のカップ。最後の一口は香り豊かな葡萄の風味が感じられ、陶器猫のおかげで何やら特別な気分に浸れました。
ファンタジー
公開:19/06/23 11:54
写真はリンゴ(?)

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
a.co/1VIyjHz

『枇杷の独り言』
ショートショートコンテスト『家族』最優秀賞頂きました。

写真は全て自前でやっています(笑)

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