30年後の夏の夜

2
5

 30年振りにローリングストーンズのTシャツを着た私は、約束の滑り台の上から、夏の夜空を見上げていた。
 つい習慣でメイクを始めたら普段より濃くなってしまった。ピチピチのTシャツ。ダッさかったなぁ…  月が滲む。

「三十年後。この滑り台で」
 カヲルは出張が多い。ミヅキは東北。離れ離れになってすぐカミングアウトした私に、二人のメールは優しかったけど、今夜の約束はまだ有効なのかな…
 三十くらいの女がやってきた。ミヅキ? もしそうならどこのコンシーラーか聞かなきゃって、コラコラ。
「あなたがヒカルさん?」
 戸惑うのも無理はない。私はハンズアップして滑り降りる。
「ミヅキの娘ね?」
「あ、あなたが私のお父さんですか?」
 そうきたか。私はちょっと唇を噛む。
「私はミヅキとはセックスできなかった。でも当時のことは詳しいわよ。聞く?」
 頷く彼女。健気だね。
 三十年経って、何かが動き始めた。
青春
公開:19/06/23 11:19
書き出しだけ大賞 二期

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容